“■加害者側としての示談
「あ、やっちゃった‥‥‥」
交通事故は、誰でも気が動転するもの。できれば、数分前に時間をもどしたい、と考えるのは、誰だってそうです。
ことを穏便に済ませたい、というのは、典型的な日本人の気質でもあり、「この程度なら示談で‥‥」と被害者が言ってくれば、ほとんど「そうですね」となります。が、示談には落とし穴がたくさんあります。
特に人身事故であるなら、単独での示談は、お勧めできません。
まず、多くの方が示談にしたがる理由の中に「交通事故を起こして警察に言えば、免許証にキズがつくのではないか」という考え。これは誤りです。
圧倒的加害事故であっても、あくまで過失ですから。ほとんどのものは免許証の点数には関係ありません。
まして車対車の事故で、免許証の点数が引かれるということは、まずないと言っていいでしょう。
正規の事故処理を依頼するか、少なくとも保険代理店には連絡をとるべきです。
人身事故でなくとも、後からトラブルが多いのが追突事故。
追突事故は、過失割合が9~10割ですから、つい示談に持っていきたがります。
が、追突の場合、後になってから「ムチウチ」を言ってくる場合が少なくありません。脳波検査ををしたらウンヌンまで話がいくと、賠償額はとんでもない金額に跳ね上がることも。
それでも示談にしたいなら、最初から「弁護士を仲介して」交渉することを宣言しておくのがベターです。
■被害者がそのスジ?
被害者が普通の人であった場合でも、追突はトラブルを生みがちですが、相手が普通の人ではなかった場合。いわゆる「そのスジ」であった事態は、なおのこと深刻です。
また、そういう輩は、警察に関わりたくありませんから、率先して「示談」を申し出てきます。
もともと、この業界(?)には、わざと追突事故を誘発させて、賠償金をぼったくる手法もあるので、運転していれば、同じめにあう危険性をはらんでいます。
身の回りの人で、そういう被害を聞いたことのある人も多いかも知れませんが、つまりそういうことです。
保険代理店のアジャスター(事故処理に対応する人)は、こうしたケースも慣れていますが、昨今流行りのダイレクト販売の保険では、アジャスターがほとんど現場に来てくれないこともあります。
もし相手が「示談」で譲らなければ、「そのスジ」である可能性は、非常に高いので、そうした場合も「では、弁護士を通しての交渉で」とあらかじめ表明しておくことが大切。
弁護士事務所が決まっていなくてもかまいません。
もし、この時点で脅してくるようであれば(普通はそうはしません)、それこそ、警察沙汰以外に方法はないのですから。
■被害者としての示談
自分が被害者で、加害者側から「示談」を持ちかけられた場合は、加害者であった時のまったく逆です。
相手が示談を申し出る理由を聞き、「免許証の点数には関係ない」旨を説いて、正規の事故処理を行うべきでしょう。
また、被害者の立場であったとしても、加盟している自動車保険の代理店か、むしくは、アジャスターを呼ぶことはできます。
餅屋は餅屋。プロに任せる、に越したことはありません。
もし、本当にたいしたことのない(警察を呼ぶまでもない)事故であれば、相手の保険会社を確認して、やりとりは加害者当人ではなく、代理店と直接するべきです。基本、加害者は「なるべく支払いたくない」わけですから。
もちろん、保険会社も支払いは避けたいわけですが、正規の手続きをふめば、保険メーカーとしての評価もありますので、まず支払いはしてくれます。
それでも、事故にトラブルはつきものですから。そうした場合は、こちらも代理をたて、弁護士を通すなりして、交渉してもらうのが無難です。
たとえば、追突されて後からムチウチが発症した場合。相手の代理店も素直には応じません。
追突事故にあった場合には、必ず脳波の検査までをしてもらうべきでしょう。
その時はなんでもないと思っていても、症状は数ヶ月後、数年後に出て来ることも少なくありません。
なんにせよ、転ばぬ先の杖、が、示談をうまく運ぶポイントです。”
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