よくあるご質問をご紹介します!

1)交通事故一般に関する質問
2)損害賠償請求一般に関する質問
3)治療費等について
4)休業損害について
5)慰謝料について
6)症状固定
7)後遺障害について
8) 逸失利益について
9)ムチウチについて
10)弁護士費用について
11) 裁判等について

1 交通事故一般に関する質問

 

Q1 交通事故に遭ってしまった場合、何をすればよいでしょうか?

まず、加害者、被害者であるかにかかわらず警察(110番)に交通事故が起きた事を連絡しましょう。

警察への報告を怠ると、自動車事故安全センターから 交通事故証明書を発行してもらえず、後の損害賠償請求や保険金請求に支障が生じてしまいます。

そして、①相手の住所・氏名・勤務先、②相手自動車のナンバー 、③相手の保険会社名をできるだけ事故現場で確認しておきましょう。(また、相手の車検証の所有者欄や使用者欄の氏名を確認できるとなおよいです)

事故により傷病を負ってしまった被害者の方は、傷病と事故との関係を明確にするために、救急車を呼んで病院に搬送してもらうか、速やかに病院に行き治療を受けましょう。

Q2 交通事故証明書とはなんですか?

交通事故証明書とは、交通事故の事実を証明するために自動車事故安全センターが発行する書類で、保険金請求の際に一般的に必要とされる書類です。

交通事故を警察に報告した後、自動車安全運転センターという所で所定の手数料を支払い入手することができます。交通事故証明書の請求用紙は、最寄りの交番で入手することができます。詳しくは自動車安全運転センターにお問い合わせください。

Q3 弁護士にはいつ相談するのがよいでしょうか?

交通事故発生直後に相談なされることをお勧めします

今後保険金を受け取るに当たり、どのような証拠が必要か、診断書を作成してもらう場合の注意点、保険会社との対応の仕方についてアドバイスを受けることが出来るからです。

このようなアドバイスのもと資料を集めて頂ければ、後の保険会社との保険金の交渉において有利になります。

Q4 弁護士は何をしてくれますか?

事故の初期段階では、今後の保険金請求の流れや、必要な証拠、診断書を作成してもらう事の注意点、保険会社とのやり取りの注意点などをアドバイスします。

症状固定が近づいてきている段階では、その状況にもよりますが、場合によっては、弁護士が被害者の方と一緒に診察室に行き、被害者の方と一緒に主治医と話をして、主治医に後遺障害診断書等を適切に記載したもらう手助けをします。

後遺障害等級認定 手続の段階では、等級認定に必要な資料のアドバイスをし、認定に対して不服がある場合には、異議申立手続きを行います。

そして、損害が確定した段階では、適切な保険金を受け取れるよう、保険会社と交渉を行います。

2 損害賠償請求一般に関する質問

 

Q1 交通事故によって損害を被った場合、どのような請求が出来ますか?

実際にかかる費用

治療費、入院雑費、付添看護費、通院交通費、装具・器具費用などの請求が出来ます。
将来にかかる費用(将来の治療費、将来の介護費、将来の装具代など)も請求できる場合があります。

休業損害

怪我によって休業または不十分な就労を余儀なくされた場合、その期間に得られたであろう利益(賃金等)の請求が出来ます。

慰謝料

事故によって怪我を負ったこと、通院を余儀なくされたことなどに対する慰謝料(入通院慰謝料)を請求できます。

また、交通事故による傷害によって後遺障害が残存した 場合には、その等級に応じて慰謝料(後遺障害慰謝料)の請求が出来ます。

逸失利益

事故によって後遺障害が残存した場合、将来の労働能力喪失に対する損害賠償を請求できます。

物損

事故によって自動車等が損壊してしまった場合、自動車の修理費、搬送するためのレッカー代、代車台(レンタカー代)が請求できます。

また、評価損(修理しても外観や機能に欠陥を生じ、または事故歴によって商品価値の下落が見込まれる場合に認められうる損害)についても請求できる場合があります。

Q2 加害者が未成年者の場合、加害者の親に損害賠償を請求できますか?

親が運行供用者にあたる場合

親が自動車の所有者である場合や、親が車の購入費用や燃料代、保険料等を負担していたて実質的に所有者といえる場合には、親は車の「運行供用者」に当たり、親に対して損害賠償請求できます。なお、「運行供用者」に対する損害賠償請求は、人身損害(怪我等に関する損害)に限ります。

親が運行供用者にあたる場合

親が運行供用者に当たらない場合でも、未成年の子が交通事故を起こしたことについて親が監督を怠ったと言えれば、親に対し損害賠償請求できる場合があります。なお、この場合には、人身損害・物的損害の双方に関する損害賠償請求をすることができます。
※「運行供用者」とは・・・車の運行について支配を及ぼしており、運行の利益を得ている人を言います。自動車損害賠償保障法によって、損害賠償責任を負う者とされています。

Q3 加害者が会社の従業員の場合,会社に対して損害賠償請求できますか?

会社の従業員が、会社の「事業」について車を使用していた場合には、会社に対し損害賠償請求が出来る場合があります。

Q4 交通事故で被害者が死亡した場合は、どのような請求ができるのですか?

交通事故で被害者が死亡してしまった場合には、亡くなった方固有の損害賠償請求権(治療費、慰謝料、逸失利益など)を相続人の方が相続し、加害者に損害賠償請求することができます

これに加え、相続人自身の損害(相続人自身の慰謝料など)を加害者に対して請求することができます。

Q5 交通事故で親が死亡した場合、相続放棄しないほうがよいですか?

相続放棄をしてしまった場合、亡くなった方固有の損害賠償請求権を加害者に対し請求することが出来なくなります

ですので、相続放棄をなされる場合は、亡くなった方の資産状況、負債状況等を把握したうえで慎重になされたほうがよいです。

なお、相続放棄をしても、相続人固有の損害(相続人自身の慰謝料など)は失うことはありません。

Q6 損害賠償請求や保険金請求をするための期限(時効)はありますか?

時効に関しては、実務的には次のように扱われています。

被害者に後遺障害が残存しない(死亡事故も含む。)場合

被害者に後遺障害が残存しない場合には、損害賠償請求権の時効は、事故発生日から進行します。そして、時効期間は3年です。ですので、事故発生から、3年以内に、損害賠償請求(この場合の請求は、訴訟提起を意味します。)をしなければなりません。

被害者に後遺障害が残存する場合

被害者に後遺障害が残存する場合には、損害賠償症請求権の時効は、症状固定日(一般的に、後遺障害診断書に症状固定日が記載されています。)から進行します。そして、時効期間は3年です。

ですので、症状固定日から、3年以内に、損害賠償請求(この場合の請求は、訴訟提起を意味します。)をしなければなりません。
しかしながら、加害者側による治療費・休業損害・慰謝料等の支払いよって、時効が成立しない場合(債務の承認といいます。)がありますので、個別に弁護士にご相談下さい。

なお、平成22年3月31日以前の事故について、自賠責保険金の請求は2年間が消滅時効の期間となりますのでご注意ください。

Q7 損害賠償請求・保険金請求の期限(時効)が迫っている場合はどのようにすればよいですか?

消滅時効の進行を止める必要があります。
内払金や仮払金をもらっている場合には、その時点で時効が中断されていると実務上扱われています。もっとも、時効の進行を止める主たる手段は訴訟を提起することです。事故から一定期間経過してしまっている場合には、すぐに専門家にご相談ください。

Q8 加害者が任意保険に加入していない場合、どのようにしたらよいですか?

①加害者の加入している自賠責保険への保険金請求
②加害者本人に対して損害賠償請求
③ご自身あるいはご家族が加入している人身傷害保険

の保険金請求などを行うことが可能です。

Q9 加害者が自賠責保険に加入していない場合、どのようにしたらよいですか?

加害者が自動車損害賠償責任保険に加入していない場合には、政府に対して、自動車損害賠償保障事業に基づく損害の填補を請求できます。

Q10 保険会社が提示してきた示談金の額が妥当かどうか,どのように判断するのですか?

交通事故の損害賠償額について、これまで多くの裁判所の判断がなされております。それらの裁判所の基準をもとに保険会社の提示額が妥当かどうかを判断していくことになります。なお、これらの基準については、財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が出している『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(通称「赤い本」)という本にまとまっております。

3 治療費等について

 

Q1 治療費など実際に必要な費用としてどのような損害が認められますか?

治療費、入院雑費、付添看護費、通院交通費、装具・器具代、葬儀代などが認められます。

Q2 治療費は誰が支払うのですか?

原則は、被害者が病院に支払うものです(法律上、被害者(患者)と病院との間に、準委任契約が成立しており、その契約の当事者である被害者(患者)が病院に対して支払うことになります。)。しかしながら、加害者が任意保険に加入している場合、任意保険会社が、被害者が通院している病院と連絡を取り、直接病院へ治療費を支払う運用がなされています。 ただし、保険会社からの直接支払いに応じない病院もあります。

加害者が任意保険に加入していない場合には、被害者が健康保険を利用して一時的に治療費を支払い、自賠責保険に請求する事になります(治療費を一部前払いしてもらう「仮渡金」という制度もあります。)

 

Q3 病院の個室代は治療費として認められますか?

原則として認められませんが、医師の指示がある場合や症状が重篤である場合、空き室がない場合などの事情がある場合には認められることがあります。

Q4 マッサージや鍼灸、温泉治療の費用は治療費として認められますか?

医師の指示がある場合などは認められることがあります。
医師の指示がない場合でも、症状に対し有効かつ相当な治療であれば、治療費として認められる場合があります。

Q5 入院雑費はどのくらい認められますか?

通常入院一日当たり1500円が入院雑費として認められます。

Q6 付添看護費用はどのくらい認められますか?

医師の指示や受傷状況、被害者の年齢により、付添が必要な場合には、職業付添人については実費全額、近親者による付添の場合は1日につき6500円程度が損害として認められます。

Q7 通院交通費は,どれくらいが認められるのでしょうか?

実費相当額が認められます。もっとも、症状などによりタクシーの利用が必要な場合は、タクシー代も認められます。

Q8 加害者に弁護士費用の請求はできないのですか?

損害賠償請求訴訟を起こし、判決で損害賠償が認められた場合には、認められた額の1割程度が裁判所より弁護士費用として認定されることが多いです。
一方、訴訟前の示談や和解の場合は、保険会社が弁護士費用を負担することはめったにありません。

4 休業損害について

 

Q1 休業損害とはなんですか?

怪我によって仕事を休まなくてはいけなかった場合や、仕事が普段よりも不十分になってしまった場合に、その期間に怪我がなければ得られたであろう利益(賃金等)のことです。

Q2 休業損害は,どのように算出すればよいのでしょうか?

通常、事故前3か月 の平均賃金を基礎に1日分の賃金を算出し、休業した日数分をかけることで算出します。 ただし、事故による治療など事故を原因として休業した日数に限られるため、事故以外の原因で仕事を休んだ場合には休業損害は認められません。実務上、保険会社所定の休業損害証明書(雇用主が証明するもので、欠勤期間、欠勤期間中の給与の支払いの有無、欠勤前3か月の給与などを記載したもの)を保険会社に提出し、休業損害を保険会社に請求していきます。

Q3 休業損害証明書に記載した休業期間は、全て休業損害として認められるのでしょうか?

休業損害証明書に記載してもらえば、休業損害が確実に支払われるとは限りません。休業損害証明書は、あくまで雇用主が被害者の欠勤期間や欠勤寒中の給与の支払いの有無等を証明するものであって、事故と休業との間の因果関係が認められない場合には、休業損害が認められないことがあります。

Q4 有給休暇を利用して仕事を休んだ場合は損害になりますか?

有給休暇を利用した場合も、事故と休業との間の因果関係が認められれば、その期間は休業期間として算定され、休業損害が認められます。

Q5 休業によって降格した場合や、昇給昇格が遅延した場合の損害は請求できますか?

事故による欠勤がなければ賞与を受けていた場合や昇格していたであろう場合には、本来受けうるはずだった賞与・賃金の金額と実際の支給額の差額が損害になります。また、事故による欠勤で降格してしまった場合には、その収入減も損害になります。

Q6 会社役員の場合、休業損害は請求できますか?

会社役員の受け取る役員報酬は、通常の会社員と異なり、利益配当の部分と労務提供の対価の部分とで構成されています。そして、利益配当の部分に関しては、休業しようがしまいが受け取ることができますので、休業損害としては認められません。それに対し、労務提供の対価部分については、労務提供がなければ受け取ることができませんので、休業損害として認められます。
詳しくは、専門家と相談することをお勧めします。

Q7 事業所得者の場合、休業損害は請求できますか?

事故によって、現実の収入減があった場合に認められます。また、休業中の固定費で、事業の維持・存続のために必要やむを得ないものは事故による損害として認められます。

Q8 事業所得者で確定申告をしていませんが、休業損害を請求できますか?

事業所得者の場合、現実の収入源があったか否かを判断するためには、確定申告等が必要となります。仮に、確定申告をしていない場合、過去の収入がなかったと判断され、現実の収入減がなかったと判断される可能性が高いです。
ですので、確定申告をしていない事業所得者の場合、多くは、休業損害が認められないことが多いと思われます。なお、確定申告をしていない場合でも修正申告等(支払っていない税金も合わせて支払うことになります。)をすれば、休業損害が認められることがあります。

Q9 事業所得者で過小申告をしている場合、実際の収入額を基に休業損害を請求できますか?

過小申告をしている場合も、確定申告をしていない場合と同様の問題が発生します。仮に、過小申告をしている場合、過去の収入が現実よりも少なかったと判断され、収入減が実際よりも少ないと判断される可能性が高いです。
ですので、過小申告をしている事業所得者の場合、多くは、休業損害が認められない、あるいは、休業損害の額が少なくなることが多いと思われます。なお、過小申告をしている場合でも修正申告等(支払っていない税金も合わせて支払うことになります。)をすれば、休業損害が認められることがあります。

Q10 学生の場合、休業損害は請求できますか?

アルバイトで収入を得ていた場合や、事故による治療によって就職時期が遅れた場合には休業損害が認められることがあります。

Q11 専業主婦の場合は、休業損害は請求できますか?

専業主婦が事故によって休養した場合には、賃金センサスの女子平均賃金を基礎に休養日数分の休業損害が認められます。

Q12 兼業主婦の場合、休業損害は請求できますか?

現実収入が賃金センサスの女子労働者の平均賃金を超えるときは現実収入を、女子労働者平均賃金以下のときは、賃金センサスの女子労働者の平均賃金を基礎に認められます。

Q13 無職の場合、休業損害は請求できますか?

事故発生時において具体的な就職先が決まっていた場合や、具体的な就職先がないが労働能力及び労働意欲があり間近い将来に就労を開始する蓋然性が高い場合には、休業損害が認められることがあります。

5 慰謝料について

 

Q1 慰謝料とはなんですか?

交通事故による精神的な苦痛に対する金銭賠償のことです。事故によって死亡したこと、怪我を負ったこと、通院を余儀なくされたことなどに対する精神的苦痛の金銭賠償を請求できます。
交通事故における損害賠償の項目としては二つあり、①入通院期間に応じた入通院慰謝料、②後遺障害の等級に応じた後遺障害慰謝料があります。

Q2 傷害事故による入通院慰謝料はどのように計算するのですか?

実際に入院、通院した期間(初診と治癒または症状固定日までの期間)を基礎に慰謝料を計算します。通院1か月で治療が終了したの場合、その傷病等によって変わりますが、18万~30万程になります。入院1か月で治療が終了した場合は、 約50万円程です。入通院慰謝料は、入通院期間によって変わり、入通院期間が長くなれば入通院慰謝料は高くなっていきます。

Q3 通院日数が少ない場合にも、入通院慰謝料は、通院期間で計算されるのですか?

通院日数が少ない場合には、現実の通院期間で計算せず、実通院日数の3倍または3.5倍した日数を通院期間として入通院慰謝料を計算します。
むち打ち症で他覚症状がない場合には、実通院日数の3倍の日数(ただし、実通院日数の3倍が通院期間を超える場合には、通院期間を限度とします。)を通院期間として入通院慰謝料を計算します。その他の傷病の場合において、通院が長期にわたり、かつ不規則である場合は、実通院日数の3.5倍の日数(ただし、実通院日数の3倍が通院期間を超える場合には、通院期間を限度とします。)を通院期間として入通院慰謝料を計算します。

Q4 後遺障害等級が認定された場合、入通院慰謝料とは別に慰謝料は請求できますか?

請求することができ、請求額は等級によって変わってきます。第1級の場合には2800万円、第14級の場合には110万円が目安とされています。

Q5 後遺障害等級が認定されない場合にも、入通院慰謝料とは別に慰謝料は請求できますか?

後遺障害等級が認定されない場合(非該当の場合)には、原則として入通院慰謝料とは別に、後遺障害慰謝料は認められません。ただ、過去の事例において、後遺障害等級が認定されない場合においても、後遺障害慰謝料に準じた慰謝料を認められた例もありますので、気になる場合には専門家にご相談下さい。

Q6 死亡事故の慰謝料について教えてください。

一応の目安として、一家の支柱の方がなくなった場合には「2800万円」、母親や配偶者がなくなった場合には「2400万円」、その他の場合は「2000万円~2200万円」と言われています(『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』上巻参照)。
もっとも、家庭内の具体的な事情や交通事故の状況等により、慰謝料の額は増減します。

Q7 物損事故のみの場合において慰謝料は認められますか?

原則として、物損事故のみの場合において、慰謝料は認められません。
ただし、ペット(法律上、ペットは物として扱われます。)の死亡事故や加害者の車が自宅等を破損して家庭の平穏が害された場合等において、慰謝料が認められた例があります。

6 症状固定

 

Q1 症状固定とはなんですか?

現在受けている治療を継続しても症状の改善が見られない状況、また現在治療を中断しても症状の悪化が見られない状況を指します。症状固定後も、何らかの症状が残っている場合、残存している症状を「後遺障害」といいます。なお、完治した場合には、「治癒」という言葉を使います。

Q2 症状固定はだれが判断するのですか?

これまで治療を行ってきた主治医が判断します(裁判においては、最終的に裁判官が判断することになりますが、治療の経過の中においては、まず、主治医が症状固定を判断するという意味です。)。症状が残存している場合には、少なくとも6か月の治療を継続したうえで、症状固定と判断しますすることが多いです。ちなみに、保険会社の担当者が、被害者の症状固定について話をしてくる場合がありますが、保険会社の担当者が症状固定を判断することはありません。

Q3 症状固定後に怪我の治療をしても良いのでしょうか?

症状固定後にも、怪我の治療をすることは差し支えありません。しかし、症状固定後の治療費等は、加害者には請求できません。

Q4 保険会社が、「症状固定で、治療費を打ち切る」と言ってきた場合、もう治療費は請求できないのでしょうか?

保険会社には、被害者の症状固定を判断する権限はありません。ですので、保険会社の言っている「症状固定」時期は、必ずしも、適切な「症状固定」時期とは限りません。治療による改善が認められるのであれば、医師に協力してもらって、保険会社に治療の必要性等を説明し、治療費の打ち切りを止めるように交渉しましょう。
それでも保険会社が支払ってくれない場合には、最終的に、治療が終了した後に請求をすること(病院との関係では、被害者が治療費を支払うことになります。)になります。

7 後遺障害について

 

Q1 後遺障害の等級の判断はどうやってされるのですか?

損害保険料率算出機構に、診断書、後遺障害診断書、検査結果等の資料を提出して後遺障害の等級認定をうけることで、後遺障害の判断がなされます。

後遺障害の等級認定手続の申請は、加害者の任意保険会社を通じて行うこと(事前認定といいます。)も可能ですし、被害者が加害者の自賠責保険会社を通じて(被害者請求といいます。)ことも可能です。

損害保険料算出機構の認定に不服がある場合は、医師の意見書や新しい診断書などを添えて、異議申し立てをすることが出来ます。

Q2 自転車事故によって後遺障害が残存した場合、後遺障害の等級認定をしてもらえるのでしょうか?

自転車事故によって、後遺障害が残存した場合は、事前認定または被害者請求の方法による後遺障害の等級認定の判断をしてもらうことはできません。最終的に、自転車事故によって残存した後遺障害が「~級」相当であることを主張して、損害賠償請求をしていくことになります。

Q3 医者にはどのように後遺障害診断書を書いてもらえばよいですか?

病名だけを記載してもらうのではなく、事故状況と症状を具体的に説明し、症状について具体的に記載してもらいましょう。それに加えて、症状が事故によるものであること(因果関係があること)を明確に記載してもらいましょう。また、MRIやCT検査、その他の検査を行った場合には、検査の所見(検査結果から症状が説明づけられることなど)を記載してもらいましょう。 関節の可動域に制限(関節の可動域は、腱側の関節(問題のない側の関節)の動く範囲との比較で判断されます。ちなみに、関節の可動域は、後遺障害診断書に角度で記載されます。)がある場合や事故による醜状痕がある場合にも、きちんとその内容を記載してもらって下さい。

Q4 後遺障害の等級が認定されると、損害賠償額は変わってきますか?

後遺障害の等級認定がなされると、後遺障害の等級認定がなされていない場合に比べて、損害の項目として、①後遺傷害慰謝料と②逸失利益が認められます。ですので、後遺障害の等級が認定される場合の方が、後遺障害の等級が認定されない場合に比べて、損害賠償額が高額になることが多いです。

Q5 事故前から障害を持っている場合にも、後遺障害の等級は認定されますか?

まず、事故前から持っている障害が事故による後遺障害と全く関係がなければ、事故による後遺障害を単独で判断して、後遺障害の等級が認められるか否かが判断されます。ですので、この場合には、事故前から持っている障害は何の関係もありません。
次に、事故前から持っている障害が事故による後遺障害と関係のある場合(例えば、事故前に脳梗塞を患っており、事故によっても高次脳機能障害が残存した場合等)には、事故前の障害については、既存障害とし扱われ、既存障害として「~級」、加重障害(現存する障害が既存の程度よりも重くなった場合い加重障害となります。)として「~級」と判断されます。そして、この場合、既存障害と加重障害との差額が損害賠償の対象となります。

Q6 示談後に、新たな症状あらわれた場合、別途損害賠償請求をすることは可能ですか?

新たな症状が、交通事故と因果関係があるか、示談成立当時予期できたものであるか、症状の程度が重大かどうかなど様々な事情を考慮して判断していくことになります。
基本的には、交通事故における後遺障害は、症状固定後にも残存した症状のことをいいます。
ですので、交通事故からしばらく経過した後に発生した症状(事故と因果関係があることが前提です。)は、交通事故の考えからいえば、まだ症状固定をしていなかったとういう扱いになります。再度、治療を再開して、症状が落ち着いて、残存症状があれば、後遺障害となると考えられます。この場合、後遺障害に対する損害賠償請求をすることが可能です。
この点については、非常に難しい問題ですので、弁護士にご相談ください。

8 逸失利益について

 

Q1 逸失利益とはなんですか?

交通事故によって死亡したり、後遺障害が残存してしまった場合に、交通事故に遭わなければ得られたであろう利益の金銭的賠償の事をいいます。

Q2 逸失利益はどのように計算するのですか?

逸失利益の計算は下記のようになります。
【死亡事故の場合】
生前の収入額(年収)×(1-生活費控除率)×労働能力喪失期間
【後遺障害の場合】
事故前年の収入額(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間

Q3 生活費控除率とはなんですか?

被害者が死亡することによって、将来の生活費の支出を免れた部分を損害から控除することをいいます。生活費控除率の目安として、女性の場合は30%、男性の場合は40%といわれておりますが、具体的な事情により増減されます。

Q4 労働能力喪失期間とはなんですか?

症状が固定してから労働が可能な年齢(原則67歳まで)の日数のことをいいます。ムチウチや神経症状の後遺障害の場合には、労働能力喪失期間は12級で10年程度、14級で5年程度に制限される場合が多いです。
労働能力喪失期間を現在の価値に引き直して計算する際に、中間利息控除係数(ライプニッツ係数)が使用されます。ライプニッツ係数とは、被害者が将来取得できたであろう収入を、現在に引き直して清算するため、その間利息を控除する計算方法のことをいいます。

Q5 労働能力喪失率とはなんですか?

後遺障害よって、実際の労働に制約が加わる割合をいいます。後遺障害の等級によって、目安が定められています。

Q6 主婦や学生、幼児の場合 ,逸失利益はどのように計算するのですか?

【主婦の方】
賃金センサスにおける女性労働者の平均賃金額を基準に,労働能力を喪失する時期(原則67歳)までの年数分の逸失利益を計算します。
有職の主婦の方で、実収入が平均賃金より上の場合はその額が基礎になります
学生、幼児の方】
賃金センサスにおける男女別全年齢平均の賃金額を基準に,就職してから労働能力を喪失する時期(通常67歳)までの年数分の逸失利益を計算します。この場合、就職するまでの間は収入がありませんので、就職までの期間に関する逸失利益は認められませんのでご注意ください。

Q7 働いてまだ間もない場合も,事故前の収入を基準に逸失利益を計算するのですか?

事故時におよそ30歳未満の若年労働者の方で,事故前の収入が賃金センサスの平均収入より低い場合は,将来的に平均賃金程度の収入が得られるか否か等を考慮したうえで、賃金センサスにおける男女別全年齢平均の賃金額を基準に計算します。

Q8 症状固定時に67歳を超えており、かつ、働いて収入を得ている場合、逸失利益はどのように計算するのですか?

症状固定時に67歳を超えており、かつ、働いて収入を得ている場合には、簡易生命表の平均余命の2分の1を労働能力喪失期間として逸失利益を計算します。

Q9 年金受給者の場合でも,逸失利益を請求できますか?

将来就労する蓋然性があれば,賃金センサスの男女別・年齢別の平均賃金額を基準に逸失利益を請求できます。

Q10 無職で収入がない場合に、逸失利益は認められますか?

労働能力及び労働意欲があり、就労の蓋然性がある方は、再就職予定の給与額や、失業前の給与額、賃金センサスの平均給与額等を基礎に逸失利益が認められる場合があります。

Q11 後遺障害の等級が認定されても、逸失利益が認められない場合がありますか?

後遺障害の内容が、労働と関係がない場合には、後遺障害の等級が認定されても、逸失利益が認められない場合があります。
例えば、後遺障害の一つして、「3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの(14級2号)」がありますが、通常の会社員の場合には歯に治療を加えたからといって、労働に影響はないと考えられますので、逸失利益が認められないと判断されることがあります。他にも、逸失利益の有無が争われる後遺障害として、醜状痕があります。

9 ムチウチについて

 

Q1 ムチウチとはなんですか?

ムチウチ(むち打ち症)とは、頸部(首)あたりに急激に力が加わることによって、頸部(首)の筋肉や靭帯,椎間板等の軟部組織や骨組織が損傷することによって現れる様々な症状を総称したものです。
医師による診断書には「頸部捻挫(けいぶねんざ)」「頸椎捻挫(けいついねんざ)」「外傷性頸椎症」「外傷性頸部症候群」と記載されることが通常です。

Q2 ムチウチでも後遺障害の等級認定はされるのですか?

後遺障害別等級認定表上、「局部に頑固な神経症状を残すもの(12級13号)」または「局部に神経症状を残すもの(14級9号)」という後遺障害の等級に該当する可能性があります。

Q3  頚椎捻挫(むちうち)後遺障害の等級認定をとるポイントを教えてください。

①    事故受傷後速やかに整形外科に行くこと

事故受傷後速やかに病院の整形外科へ行き、具体的な症状を医師に説明してください。

②    症状がある限り通院を継続すること

自覚している症状があるのであれば、自分の判断で治療を中止せず、通院を継続するようしてください。症状が残存しているにもかかわらず事故の判断で早めに治療を打ち切ってしまうと、後に後遺障害として等級認定されるのが困難となります(あくまで目安として、6か月以上の治療が必要とされています。)。

また、整骨院・鍼灸院に通院されても、柔道整復師には、診断権がなく(診断書を作成できません。)、また、画像を撮影することもできませんので、整骨院・鍼灸院における治療経過は、後遺障害の等級認定にうまく結び付かないことが多いと思われます。

③    画像検査を受けること

X線検査およびMRI検査を受けてください。

④    頸部(首)・腰部の神経学検査を受けること

スパーリグテスト 、ジャクソンテストなどの神経学的検査を受けてください。
※その他状況によって必要な点が変わってきますので、詳しくは弁護士等の専門家にご相談ください。

Q4 ムチウチで12級13号に認定された場合、後遺障害に関する損害賠償額はどうなりますか?

後遺障害の等級が認定された場合、逸失利益が認められます。そして、逸失利益は、原則として67歳まで認められます。
しかし、ムチウチによって、「局部に頑固な神経症状を残すもの(12級13号)」が認定された場合、逸失利益における労働能力喪失期間が限定されることが多く、実務的には、10年程度に限定される可能性が高いです。

Q5 ムチウチで14級9号に認定された場合、後遺障害に関する損害賠償額はどうなりますか?

Q4と同様、ムチウチによって、「局部に神経症状を残すもの(14級9号)」が認定された場合、逸失利益における労働能力喪失期間が限定されることが多く、実務的には、5年程度に限定される可能性が高いです。

10 弁護士費用について

 

Q1 弁護士費用はどのくらいかかりますか?

弁護士費用は、法律事務所によってまちまちですが、当事務所では、
①事件受任時にいただくは着手金0円
②事件終了後にいただく報酬金20万円(税抜)+保険金の15%(税抜)
でやらせていただいています。

Q2 弁護士費用特約とはなんですか?

弁護士費用特約とは、被保険者等の方が、自動車と交通事故にあって損害を被った場合、相手方や保険会社に損害を請求するために必要な弁護士費用(相談料、示談交渉、訴訟提起など)について、一定の範囲で保険金が支払われる保険です。 現在の保険契約では,弁護士費用として300万円まで保険金が出るものが多いです。

Q3 弁護士費用特約に入っているかはどのように調べればよいですか?

保険証書の特約欄をご覧いただき、「弁護士費用特約」の記載があるかどうかをご確認ください。
ご不明の場合は、直接保険会社までお問い合わせください。

Q4 弁護士費用特約は法律相談や示談交渉の段階でも使用できますか?

法律相談や示談交渉の段階でかかる弁護士費用にも使用できます。

11 裁判等について

 

Q1 裁判は誰が起こすのですか?

交通事故の損害賠償請求においては、原則として被害者が裁判を起こします(裁判を起こすことを訴訟提起といい、訴訟提起をした人を原告、訴訟提起をされた人を被告といいます。)。例外的に、加害者側が債務不存在確認請求訴訟(損害賠償義務がない、あるいは、~円以上の損害賠償義務がないことを確認するための訴訟です。)を起こすことがあります。

Q2 裁判はどのような流れで進みますか。

裁判は、原告が訴状を裁判所に提出するとことから始まります。訴状を裁判所に提出すると,第1回目の裁判の期日が決まり,当事者が出廷します。相手がに反論がある場合は,次回の期日以降,反論します。そして,お互いに証拠を提出しながら,それぞれの主張を補強していきます。お互いの主張がある程度進むと,裁判所から和解の提案があります。これを「裁判上の和解」といい,交通事故訴訟の場合,裁判上の和解で解決することが割合として多いです。和解が成立しない場合,各当事者の尋問を行い,最終的に判決が下されることになります。

Q3 示談(保険会社との交渉)・裁判上の和解・判決とで、金額に違いはありますか?

大まかなイメージだと次のようになります。
①示談:総損害額
※保険会社との交渉で示談となる場合には、慰謝料等が裁判基準よりも低くなることがあります。
②裁判上の和解:総損害額+調整金
※調整金は遅延損害金(年5%)よりは低いですが、裁判所が事故発生からの年数等を考慮して遅延損害金に準じて総損害額に上乗せしてくれる場合があります。
③判決:総損害額+遅延損害金+弁護士費用
※判決の場合、総損害額に遅延損害金(年5%)及び弁護士費用(10%)を上乗せしてくれます。
金額だけを見ると、③の判決が最も金額が高いですが、労力(本人尋問等)や期間等を考慮して、①示談(保険会社の提示額が裁判基準に近い場合等)または②裁判上の和解で終了することも多いです。交通事故の賠償に関しては、多くが、①示談、または、②裁判上の和解で終了しています。

Q4 裁判になった場合どのくらいの期間で決着がつきますか?

最初の裁判期日から、次の裁判期日まで1か月から2か月 程度の間隔が空きます。判決が出るまで少なくとも6、7回程度期日を重ねるため、判決が出るまで、7か月 ~1年半程度かかります。
裁判上の和解が成立する場合は、判決を待つより早く6~8か月かそれよりも解決することがあります。

Q5 私も裁判に出席しなくてはいけませんか?

弁護士に依頼すれば、弁護士が依頼者の方の代わりに出廷しますので、依頼者の方は原則として裁判期日に出廷していただく必要はございません。
もっとも、当事者の尋問を行う場合は出廷していただく必要がございます。その際も、事前に準備を行い、万全の準備を整えて弁護士も共に出廷いたしますのでご安心ください。

Q6 裁判以外にも強制的に保険金を支払ってもらう手段はありませんか?

裁判以外にも、公益財団法人交通事故紛争処理センターによる斡旋があります。交通事故紛争処理センターによる斡旋は、尋問等を行わないので、裁判に比べて早期に解決できる利点があります。ただ、過失割合に大きな争いがある場合や医学的な知見が必要な場合には、判断ができない場合があります。
事故によっては、交通事故紛争処理センターにおける解決が向いている場合がありますので、弁護士等の専門家に相談すると良いでしょう。

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